「毎回1on1の前にアジェンダを一から考えるのが負担」「何を書けばいいか分からず、結局メモなしで臨んでしまう」そうした声は管理職・OJT担当者から非常によく聞かれます。
アジェンダがない1on1は話が脱線しやすく、時間が経っても「何を決めたか」が曖昧になりがちです。一方、アジェンダを毎回ゼロから作ろうとすると準備自体がハードルになります。
本記事では、目的・前回振り返り・今回のテーマ・時間配分の4要素で構成する1on1アジェンダテンプレートを記入例・テーマ別バリエーションとともにそのまま使える形で提供します。「準備の方法論」よりも「すぐ使えるツール」として設計していますので、今日の1on1からご活用ください。
1on1の目的・全体像については1on1ミーティングとは?効果的な面談を実現する準備・実施・フォローアップの全体像もあわせてご参照ください。
1on1アジェンダを用意することの目的と使い方
1on1におけるアジェンダは「議題の羅列」ではなく、面談の目的を双方が共有するための設計図です。アジェンダがあることで次の3つの効果が生まれやすくなります。
- 時間の無駄を防ぐ:何を話すかを事前に絞ることで30分の枠を最大限に使いやすくなる
- 部下の安心感を高める:「今日何を聞かれるか」が分かると部下が準備を持ってこられる
- 振り返り・引き継ぎに使える:記録として残すことで前回合意の確認が容易になる
使い方のポイントは上司が一方的に作るのではなく、部下にも事前に共有・記入してもらうことです。詳細は後述の「部下と共同で作るアジェンダの設計」セクションで解説します。1on1を初めて運用し始める管理職の方は、新任管理職が最初にやるべきこともあわせてご参照ください。
1on1アジェンダの構成(4要素)
使いやすいアジェンダは次の4要素で構成します。この4要素がそろえばどんな1on1にも転用できます。
| 要素 |
記載内容 |
目安時間(30分枠の場合) |
| ① 目的 |
今回の1on1で何を達成したいか(1〜2行) |
—(事前記入) |
| ② 前回振り返り |
前回の合意事項・アクションの進捗確認 |
5分 |
| ③ 今回のテーマ |
メインで話したいこと(1〜3項目) |
20分 |
| ④ 時間配分・次のアクション |
各テーマの配分目安と、次回までに行う行動 |
5分 |
この構成の特徴は振り返り→現在→次のアクションという時間軸で話が自然に流れることです。テーマが複数ある場合も③の欄に優先順位をつけて並べるだけで運用できます。
1on1アジェンダの記入方法と具体例
以下は実際に入力した状態のサンプルです。コピーしてGoogleドキュメント・Notionなどに貼り付けてご使用ください。
基本テンプレート(記入例付き)
| 項目 |
記入例 |
| 実施日時 |
2026年6月10日(火)10:00〜10:30 |
| 参加者 |
田中(上司)/鈴木(部下) |
| ①今回の目的 |
先月末の受注失注案件の振り返りと、今月の提案活動の改善点を一緒に整理する |
| ②前回の振り返り |
・ヒアリングシートの改訂→完了。実際に使ってみた感触を確認する ・上位者への同行依頼→未着手。状況を確認する |
| ③今回のテーマ(優先順) |
1. 失注案件の要因分析(15分) 2. 今月の重点顧客3社の進め方(10分) 3. 来月目標の共有(5分) |
| ④次回までのアクション |
・鈴木:A社への提案書を木曜までにドラフト ・田中:B社の商談に同行できる日程を調整 |
| 次回予定 |
2026年6月17日(火)10:00〜 |
記入のコツ
- ①目的は動詞で終わらせる:「○○を確認する」「○○を整理する」と書くと、面談後の達成基準が明確になる
- ②前回振り返りは「完了・未着手・途中」のステータスで記載:できていないことを責める場ではなく、次のサポートを考える場として使う
- ③テーマに時間を書く:「15分」と書くだけで時間オーバーを防ぐ意識が生まれる
- ④アクションは主語を明記する:「誰が・何を・いつまでに」の3点を入れると、次回の振り返りがしやすくなる
1on1テーマ別アジェンダ例
1on1の目的はその時々で異なります。以下に3つの代表的なテーマ別バリエーションを示します。
育成・スキル開発テーマ
| 項目 |
記入例 |
| ①今回の目的 |
今期の成長テーマを本人の言葉で整理し、次の3ヶ月の学習計画を決める |
| ②前回の振り返り |
・読了予定だった書籍1冊→読了。感想を聞く |
| ③今回のテーマ |
1. 自分の強み・伸ばしたい領域(10分) 2. 担当業務で感じているギャップ(10分) 3. 次の3ヶ月でやること(10分) |
| ④次回までのアクション |
・本人:成長テーマを1行で書いてSlackに共有 ・上司:社内研修の候補をピックアップ |
課題解決テーマ
| 項目 |
記入例 |
| ①今回の目的 |
案件停滞の原因を一緒に整理し、今週中に動ける打ち手を決める |
| ②前回の振り返り |
・先週試みたアプローチ→試したが先方から返答なし。状況を詳しく聞く |
| ③今回のテーマ |
1. 停滞している案件の状況共有(5分) 2. 原因の仮説出し(10分) 3. 打ち手の選択肢と決定(10分) 4. 上司サポートの確認(5分) |
| ④次回までのアクション |
・本人:決定した打ち手を木曜に実施 ・上司:必要なら上位者に相談のうえフォロー |
モチベーション・コンディション確認テーマ
| 項目 |
記入例 |
| ①今回の目的 |
最近の状態を率直に話してもらい、必要なサポートがあれば一緒に考える |
| ②前回の振り返り |
・業務量が多いと話していた→その後どうか確認 |
| ③今回のテーマ |
1. 最近の業務の調子・感情(10分) 2. やりがいを感じていること・感じにくいこと(10分) 3. 私にできるサポート(10分) |
| ④次回までのアクション |
・上司:業務の優先度を再整理して共有 ・本人:やりたい仕事を1つ挙げておく |
特にモチベーション・コンディション確認のテーマは、早期の離職リスク把握にも直結します。1on1での対話設計とあわせてマネジメント起因の離職を防ぐ設計も参考にしてください。テーマ別に使い分けることで毎回「何を話すか」を悩む時間を大幅に減らせます。1on1で使える質問の引き出しを増やしたい場合は、1on1の質問技術|部下の思考と本音を引き出す質問の種類と使い方も参考にしてください。
部下と共同で作るアジェンダの設計
アジェンダを上司だけが作ると、「面談は上司のためのもの」という意識が生まれやすくなります。部下が主体的に1on1に関わるためには、アジェンダの一部を部下自身に記入してもらう仕組みが効果的です。
共同作成の運用フロー
- ステップ1(前日まで):上司が「①目的」「②前回振り返り」を記入してアジェンダを共有する
- ステップ2(前日〜当日朝):部下が「③今回話したいこと」を記入して返送する
- ステップ3(面談冒頭):双方の記入内容を確認し、優先順位を合意してから始める
- ステップ4(面談後):「④次のアクション」を双方で確認して記録に残す
部下記入欄のテンプレート(依頼文つき)
以下の文章を1on1前日に部下へ共有すると、記入率が上がります。
| 依頼文(コピー可) |
| 「明日の1on1のアジェンダを共有します。③の「今回話したいこと」欄に、あなたが話したいテーマや相談事項を1〜3点書いて返信してください。何でも構いません。業務の進め方・キャリア・困っていること、なんでもOKです。」 |
部下が記入しやすくする工夫
- 「何でも書いていい」と明示する(評価に使わないことを伝える)
- 最初は「最近の業務で気になっていることを1つ書いてください」と範囲を絞る
- 数回繰り返すうちに、部下が自然とアジェンダを主導するようになっていきます
アジェンダの運用と並行して、1on1の場で部下の課題や本音を引き出す進め方を体系的に身につけたい管理職の方は管理職の1on1実践方法もあわせてご参照ください。
1on1を共同で作る習慣が定着すると、1on1の進め方そのものも変わっていきます。傾聴・質問・合意の流れがスムーズになり、合意内容の実行率も高まりやすくなります。
なお1on1の頻度や時間配分の設計について悩んでいる場合は、1on1の頻度と時間はどのくらいが適切か?も参考にしてください。
まとめ:1on1アジェンダは「4要素+共同作成」が基本形
1on1アジェンダの設計は複雑にする必要はありません。本記事でご紹介した内容を整理します。
- 4要素で構成する:①目的 ②前回振り返り ③今回のテーマ(時間配分つき) ④次のアクション
- テーマ別に使い分ける:育成・課題解決・モチベーション確認の3パターンを持っておくと準備の負担がゼロに近づく
- 部下にも記入してもらう:③の欄を部下が書く仕組みにするだけで主体性と準備の質が変わる
- 毎回ゼロから作らない:テンプレートを保存しておき、日付・名前・テーマだけ差し替えて使う
アジェンダは1on1の「道具」です。完璧を目指すよりも毎回使い続けることの方が重要です。まずは本記事のテンプレートをそのままコピーして次回の1on1から試してみてください。
アジェンダに沿って進める1on1の中でフィードバックをどう組み込むかについては、1on1にフィードバックを組み込む設計方法もあわせてご参照ください。準備からアジェンダ設計までの全体的な流れを確認したい場合は、1on1の準備と事前設計の方法をあわせてご覧ください。