「改善活動はやっているのに、記録が残らない」「担当者が変わると取り組みがリセットされる」現場改善の現場でよく聞かれる悩みです。
TWI JMの4ステップは仕事のやり方を構造的に見直すための強力なフレームワークですが、そのプロセスを記録・共有するための「書式」がなければ改善の成果は属人化したままになります。
本記事では、TWI JMの4ステップに対応した改善シートテンプレートの構成・記入方法・活用事例・継続運用の仕組みをまとめて解説します。シートをそのまま現場で使えるかたちで提供しますので、ぜひご活用ください。
このシートの目的と使い方
なぜ「改善シート」が必要か
TWI JMは「仕事の分解→すべての細目を検討する→新しい方法を作る→新しい方法を採用する」という4ステップで改善を進めます。このステップ自体は明快ですが、取り組みを口頭だけで進めると次のような問題が起きがちです。
- 改善の背景・経緯が記録されず、なぜその方法に変えたかが後からわからなくなる
- 改善した内容が担当者の頭の中にとどまり、他の工程・他の拠点へ横展開できない
- 実施後の効果確認が曖昧になり、改善の成否を評価できない
改善シートは「JMの思考プロセスをそのまま紙(またはデータ)に落とし込む」ツールです。シートを埋めること自体が改善活動の構造化につながり、チーム内での議論・引き継ぎ・横展開を可能にします。
このシートの対象者と活用場面
- 現場責任者・班長・リーダー:改善案をまとめてチームに提案する場面
- 改善担当者・QCサークルメンバー:活動記録として蓄積する場面
- 人材育成担当者:OJT指導員がJMを教えるための手本シートとして活用する場面
製造業での活用が典型例ですが、サービス業・事務職の業務改善にも同様の構造で使えます。後述の業種別記入例を参考にしてください。
シートの構成(各欄の説明)
改善シート全体の構成
シートはJMの4ステップに対応した5つのブロックで構成します。以下の表に各欄の役割を整理します。
| ブロック | 欄名 | 対応するJMステップ | 記入内容の概要 |
|---|---|---|---|
| ①基本情報 | 業務名・担当者・記入日・部署 | (前提情報) | 対象業務の特定・管理用メタ情報 |
| ②現状整理 | 現在のやり方・課題・問題点 | Step1:仕事を分解する | 現在の手順を要素分解し、問題の所在を明示する |
| ③分解・分析 | 要素一覧・各要素の問いかけ結果 | Step2:すべての細目を検討する | 「なぜ・誰が・何を・どこで・いつ・どのように」で各要素を問い直す |
| ④改善案 | 新しい方法・改善の根拠 | Step3:新しい方法を作る | 排除・結合・順序変更・簡素化の結果として生まれた新方法を記載 |
| ⑤実施確認 | 実施日・効果確認・次のアクション | Step4:新しい方法を採用する | 実施後の状況・効果・残課題・横展開の可否を記録する |
①基本情報欄
業務名は「〇〇ライン 部品取り付け工程」「受注処理 入力作業」など、改善対象が一目でわかる粒度で記入します。「製造部門の業務」のような抽象表現は避け、工程・作業単位まで絞り込むことがポイントです。
②現状整理欄
現在のやり方を手順ベースで箇条書きにします。「何を・どの順で・どのくらいの時間で」やっているかを記載します。その下に「課題・問題点」として、なぜ改善が必要かを具体的に書きます(例:「手待ちが発生する」「ミスが発生している」など)。
③分解・分析欄
現状の各手順要素に対してJM独自の問いかけを行います。主な問いは以下のとおりです。
- なぜその作業が必要か?(不要な要素の発見)
- 誰がやるべきか?(担当の最適化)
- いつ・どこでやるべきか?(タイミング・場所の見直し)
- どのようにやるべきか?(方法の改善)
この問いの結果として「排除できる」「他の要素と結合できる」「順序を変えられる」「もっと簡単にできる」のいずれかに分類します。
④改善案欄
③で出た気づきをもとに新しい手順・方法を具体的に記述します。「〇〇という手順を廃止し、△△に統合する」「順序を第3工程から第1工程に変更する」など、変更点を明確に書きます。改善の根拠(なぜそれが良いか)も一言添えると後から振り返りやすくなります。
⑤実施確認欄
実施日・実施者を記入し、新方法を試した後の状況(効果・問題点・メンバーの反応)を記録します。「横展開可能か」のチェック欄を設けると同様の改善が他の工程・他の拠点でも使えるかを判断しやすくなります。
記入方法(業種別の具体例)
以下の記入例はテンプレートの使い方を示すための参考例です。各数値は実際の現場状況に応じて変わります。
製造業での記入例:部品検査工程
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 業務名 | 完成品外観検査(Aライン) |
| 現状のやり方 | ①パレットから製品を1個取り出す②目視で全面確認③記録用紙に手書きで記入④パレットに戻す |
| 課題 | 記録転記に時間がかかり、1シフトで累計のロスが発生している |
| 分解・分析結果 | 「③手書き記録」に対して「なぜ手書きか?」→デジタル入力可能なタブレットが使われていない。「結合できる」と判断 |
| 改善案 | タブレットへのタップ入力(OK/NGのみ)に変更。記録時間を大幅に短縮 |
| 実施確認 | 試行後:記録時間が顕著に短縮。ミス件数は変化なし。横展開可(BラインCライン) |
サービス業での記入例:接客時の案内手順
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 業務名 | 来店客への席案内〜注文受付 |
| 現状のやり方 | ①来店確認②席へ誘導③メニュー手渡し④一度下がる⑤呼ばれたら注文受付 |
| 課題 | 混雑時に呼ばれるタイミングがバラバラで、スタッフが席待機しなければならない場面が多い |
| 分解・分析結果 | 「④一度下がる」はなぜ必要か?→慣習的に行っているだけで必須ではない。「③メニュー手渡し後すぐにおすすめを案内→その場で注文受付」の流れに変えられる |
| 改善案 | 席案内→メニュー手渡し→おすすめ一言案内→その場で注文受付に変更。待機時間を削減 |
| 実施確認 | 注文受付までの時間が短縮。スタッフ「スムーズになった」との声。週末繁忙帯での検証が次のステップ |
事務職での記入例:社内申請処理
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 業務名 | 経費精算申請の確認・承認処理 |
| 現状のやり方 | ①申請書受領(紙)②金額・領収書確認③上長へメール転送④承認後システム入力⑤ファイリング |
| 課題 | 紙→メール→システムと媒体を3回変換しており、入力ミスと処理遅延が発生している |
| 分解・分析結果 | 「①紙受領」「③メール転送」はワークフローシステム上で一元化できる。媒体変換の工程を排除できる |
| 改善案 | 申請・承認・記録をワークフローシステムに一本化。紙申請・メール転送を廃止 |
| 実施確認 | 処理リードタイムが大幅に改善。他部門の申請処理にも同様の仕組みを展開予定 |
このようにJM改善シートは業種を問わず「手順の分解→問いかけ→新方法の設計」という同じ構造で使えます。属人化解消と標準化の観点でもこのような記録の蓄積が有効です。






